以前、【完全ワイヤレスヘッドホン】 Shennheiser Momentum Wireless 3 レビューという記事を書きましたが、イヤホンでは決して実現出来ない音の表現がヘッドホンにあるということに気づき、イヤホン沼を脱出し、新たにヘッドホン沼に沈んでみることにしました。
その準備にあたり、大人気のヘッドホンアンプ、ifi AudioのZEN DACと別売のAC電源iPowerを購入しました。
音質やいい点、気になる点にポイントを絞りレビューしてみようと思います。
ifi Audioとは
イギリスのハイエンドオーディオメーカーAMR(Abbingdon Music Research)から派生した、エントリーユーザーをターゲットにしたブランドとなります。
※AMRの製品は数十万以上するものばかりです。
ポタアンの人気商品、micro iDSDシリーズでifi Audioの名前は知っているという方はいらっしゃるかもしれません。
また、伝説的なオーディオエンジニア、ジョン・カール氏が技術顧問に就任したことでも話題となっています。
ifi Audioの一番の強みとして、搭載されているXMOSのファームウェアを自社で開発出来る点が上げられます。
このため、例えば新しい規格の音源データの仕様が公開された際、対応したファームウェアをいち早く自社サイトを通じてユーザーに配布したりといったことが可能なメーカーです。
他社はXMOS純正のファームウェアをライセンス料を支払い購入しているので、ifi Audioのような迅速な対応ができません。
ZEN DACの人気の理由
- ジョン・カール氏が携わったプロジェクトの製品(なので無論音がいい)
- なのに低価格(2万円以下)
が上げられるんじゃないかなと思います。
当記事を執筆している2021年2月現在、どこも入荷待ちの状態で予約しないとまず手に入りません。
運よく通常在庫があったとしても瞬時に完売してしまうほど超人気です。
私は入荷直前に予約をしたようで、予約後すぐ入手出来たのですが、タイミングが悪いと入荷まで1ヶ月以上待たされることがあるようです。
ZEN DACが他のヘッドホンアンプとは別格である理由については、こちらの記事をご覧頂けるとお分かりになると思います。
音質
- CampFireAudio ANDROMEDA(バランス接続)
- Shure SE846(バランス接続)
- Shennheiser Momentum Wireless 3(アンバランス接続)
- Beyerdynamic T5P 2nd Generation(アンバランス接続)
をZEN DACに繋げ試聴しました。
所有しているDAP:Astell&kern A&norma SR25との音質レビューと概ね同じ感想となりますが、
- 解像度や音の傾向はイヤホン/ヘッドホンの性能に依存(音の味付けはされていない)
- 音場もイヤホン/ヘッドホンの性能に依存
- 音の定位ははっきりしている
- 只々音がクリア
という印象です。
試聴したイヤホン/ヘッドホンがハイエンドのものばかりなので、明確な良さをお伝えするのが逆に難しくなってしまったという気がしますが、言い換えればハイエンド イヤホン/ヘッドホンの良さを損なわない音質を実現しているアンプと言えます。
これがこの製品の目指すところなのかもしれません。
※Astell&kern A&norma SR25のレビューについて、こちらの記事をご覧頂けると幸いです。
駆動力
イヤホンでは特に問題は無いと思いますが、ヘッドホンの場合はこのアンプの駆動力は気になるんじゃないかなと思います。
ZEN DACを検討していた時、店頭でShennheiser HD660S(150Ω)で試聴させてもらいましたが、ハイゲインモードで難なく鳴らし切っていました。
インピーダンス150Ωくらいなら駆動力は全く問題ないと思います。
ただ、重量級インピーダンス(300Ω〜600Ωクラス)のヘッドホンの場合は厳しいかもしれません。
重量級インピーダンスのヘッドホンを繋ぐ場合は、専門店のスタッフさん確認された方がよいかと思います。
※ZEN CANという別製品をZEN DACに繋げば重量級のヘッドホンも楽勝で鳴らしきることができるようです。詳細は下記記事をご覧下さい。
いいところ
筐体がコンパクト
筐体は非常にコンパクトで、掌から少しはみ出るかなというサイズです。
机の上に置いても全く問題にならないサイズだと思います。
筐体の質感、剛性がよい
実売価格2万円を切る製品ですが、筐体表面は非常に綺麗に仕上げられており、質感はよいです。
またコンパクトな筐体にも関わらず持ってみると重量感があり、しっかりした剛性の作りになっています。
USBバスパワー給電に対応
USB3.0のI/FをZEN DACは備えているので、重量級ヘッドホンやスピーカーを繋がない限りは、給電容量上限値内(電流900mA、電圧5V、電力4.5Wまで)で十分収まると思います。
が、USB給電による音楽信号へのノイズの混入を避けたい場合や、電力がいるヘッドホン、スピーカーを繋げる場合は、別売の電源アダプタ(iPower)を購入し、そちらから給電した方がよいでしょう。
私は給電ノイズ混入防止とスピーカーを繋ぐので、iPowerを購入しました。
4.4mmバランス接続端子がついている
4.4mmバランス接続端子が前面と背面、計2箇所搭載されています。
背面にバンラス接続端子があるということは、バランス接続対応可能なスピーカーに繋ぐことができるということを意味しています。
(他のZEN製品接続にもこちらを使います)
ZEN DAC購入に伴いスピーカーも変更しようとしていますので、スピーカーのバランス接続も是非試してみたいと思っています。
追記:スピーカーを変更しました
スピーカーを変更し記事を書きましたので、ご覧頂けると幸いです。
気になる点
電源ボタンがない
USBバスパワー給電が前提なのか、コスト削減なのか分かりませんが、電源ボタンが付いてません。
電源を切りたい場合はUSBケーブル(またはACアダプタケーブル)を本体から抜く必要があります。
イヤホンではホワイトノイズが聴こえる
ヘッドホンでは全く聞こえませんが、イヤホンでは再生停止中、はっきりとホワイトノイズが聴こえます。
まぁ、これは仕方ないと言えば仕方ないです。
ホワイトノイズが気になる方は他の機器に繋いで聞いた方がいいかもしれません。
非排他制御
これは私は気になりませんでしたが、気になる方は非常に気になる点だと思います。
スピーカー出力で音楽を再生中にヘッドホン/イヤホンプラグを挿すと、スピーカー出力が止まり、ヘッドホン/イヤホン側の出力に切り替わる(排他制御)DAC アンプは多いと思いますが、ZEN DACは非排他制御なので、繋がっているデバイス全てから出力されます。
(この非排他制御が気に入らず手放される方もいらっしゃるようですね)
排他制御をしたい場合は、間に機材をかましたり、スピーカー側の電源をオフにする、またはボリュームを最小にするといった工夫や運用が必要になります。
まとめ
ZEN DAC購入を機にヘッドホンの世界に足を踏み入れた若輩者の身ですが、価格を含め初めて手を出すヘッドホンアンプとしては良作だと思います。
私と同じようにこれからヘッドホンに手を出そうと思われている方、最初の一台にZEN DACいいと思います。